本文へスキップ

ATTACK METHOD

ランサムウェア ― 日本は過去最多、世界最速29分の脅威

二重恐喝・バックアップ削除・LOLBins・EDR無効化などランサムウェアの手口を解説。警察庁統計(2026年上半期123件)とCrowdStrikeのブレイクアウト29分など最新数字と対策。

当サイト収集事案: 46事案影響規模の合計: 約1,442万人分全手法の一覧: 攻撃手法の分類と動向

ランサムウェアは「データを人質に金を要求する」攻撃で、2026年も日本と世界で最も被害額の大きいサイバー犯罪であり続けています。警察庁の集計では2026年上半期の被害確認が123件と、集計開始(2020年)以来 半年ベースで最多。うち大企業が31件、復旧に1ヶ月以上かかったのが半数超、9件が事業の全面停止に至り、被害額が1,000万円を超えた事案が6割を占めました。

世界でも全データ侵害の48%にランサムウェアが関与しています(DBIR 2026)。また CrowdStrike GTR 2026は、侵入から横展開までの平均所要時間(ブレイクアウトタイム)が29分と過去最速になったと報告。「気づいてから対処」では間に合わず、平時の設計と自動検知が生死を分けます。

手口も進化しています。単なる暗号化に加え、窃取したデータの公開を脅す「二重恐喝」が標準化し、バックアップを先に破壊する、セキュリティソフトを止める、正規の管理ツールを悪用して検知を逃れる(LOLBins)など、復旧と調査を困難にする工夫が重ねられています。

数字で見る動向

123件

日本の2026年上半期被害確認(警察庁・半年ベース過去最多)

48%

世界の侵害でランサムウェアが関与する割合(DBIR 2026)

29分

侵入から横展開までの平均・過去最速(CrowdStrike GTR 2026)

具体的な技法の解説

二重恐喝(窃取+暗号化)

データを暗号化する前にまず窃取し、「払わなければ公開する」と二重に要求する手口です。現代のランサムウェアの標準構成で、身代金を払ってもデータが公開される例が後を絶ちません。窃取した個人情報は二次被害(なりすまし・詐欺)にも使われます。

バックアップの削除・暗号化

復旧の命綱であるバックアップを、暗号化の前に探し出して削除・暗号化します。同一ネットワーク上に置かれたバックアップは無力化されやすく、「3-2-1(3コピー・2媒体・1つは外部)」が今も原則です。

LOLBins(正規ツールの悪用)

攻撃ツールを持ち込まず、Windows に標準で入る管理ツール(PowerShell 等)を悪用して横展開・無効化を行う手法です。ウイルス対策ソフトが検知しにくく、異常な使い方をログで見抜く必要があります。

EDR・セキュリティソフトの無効化

侵入後、まず EDR(エンドポイント検知・対応)やウイルス対策を止めてから本格的な暗号化に移行します。対策側は、セキュリティツールの停止イベントそのものを最重要アラートとして扱う運用が有効です。

ランサム交渉ポータル

被害者ごとに専用の「交渉画面」を用意し、チャットで金額交渉と期限管理を行う仕組みです。ランサムウェアがサービス化(RaaS、アフィリエイト制)している証左でもあります。日本語での交渉に対応するグループもあり、警察・専門機関への相談を先行させることが重要です。

攻撃の流れ(キルチェーン)

  1. 脆弱性・認証情報・メール等を足がかりに侵入
  2. 認証情報を窃取して横展開し、バックアップを無効化
  3. データを窃取したうえで暗号化し、身代金を要求(二重恐喝)

狙われる情報: 顧客情報・財務情報全般。窃取後に公開・転売される

動向と論点

日本では2026年10月、能動的サイバー防御法に基づく「アクセス無効化」権限が発効し、政府が攻撃者インフラへの対処に動けるようになりました。事業者側にも、被害の疑いの段階で相談できる IPA「不正アクセス特別相談窓口」が開設されています。孤立して対応せず、早期に専門機関へつなぐことが回復速度を左右します。

ランサムウェア被害の入口は他手法との連続です(脆弱性悪用・認証情報・フィッシング)。つまり入口対策(パッチ・認証強化・メール対策)と出口対策(バックアップ・分段・訓練)の両輪がランサムウェア対策そのものです。インシデント対応訓練( tabletop exercise)を年1回は実施し、「誰が何を誰に電話するか」まで決めておくことをお勧めします。

対策

個人・中小事業者向け

  • 重要データはクラウド同期と外付け媒体の両方に分けて保存する(3-2-1 の個人版)
  • 身に覚えのない「身代金要求」が届いても、送金せず警察・消費者ホットラインに相談する
  • 漏洩報道を見たら、そのサービスで使ったパスワードの再利用をやめる

組織(情報システム部門)向け

  • 3-2-1 バックアップ(3コピー・2媒体・1つはオフライン/外部)と復旧訓練を定期実施
  • 多要素認証の全面適用と特権アカウント(PAM)管理で横展開を抑止
  • EDR 導入と、セキュリティツール無効化・大量暗号化を最優先アラートにする監視設計
  • 被害時の初動手順(経営・法務・広報・警察・IPA 相談)を文書化し、役割と連絡先を訓練で確認

保護レベル別の具体的な手順は対策ガイドで解説しています →

当サイト収集のランサムウェア事案(46件・影響規模順)

企業・組織公表日対象規模重大度
ライドオンエクスプレス(『銀のさら・釜寅・すし上等』公式サイト・公式アプリ)2026年10月12日6,500,000件SS
アフラック生命保険2026年6月29日4,400,000人S
アサヒグループホールディングス2026年7月16日1,525,000件S
CKCネットワーク株式会社、株式会社学参2026年6月9日664,000件B
イズミ(ゆめオンライン・ゆめデリバリー)2026年10月13日400,000件A
エネサンスグループ2026年5月10日365,000件A
あなぶきハウジンググループ2026年5月20日207,773件S
エフワン2026年4月7日170,000件B
ロジックベイン2026年8月16日97,338人A
ジェックス2026年8月18日77,619件S
教育ソフトウェア2026年8月16日4,627件B
生活協同組合コープいしかわ2026年4月23日1,756件B

他 34 件を含む全事案は漏洩ウォッチで →

関連する攻撃手法

出典・統計の詳細は 攻撃手法の分類と動向 の出典一覧をご参照ください(Verizon DBIR 2026、CrowdStrike GTR 2026、警察庁・共同通信、 Palo Alto Networks Unit 42 ほか)。事案個別の情報は各事案ページの出典リンクから公式発表をご確認ください。

← 攻撃手法の分類と動向に戻る

LIVE