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JAENES

WORLD THREAT LANDSCAPE

世界のセキュリティ事情

国内の漏えい事案の多くは、国境を越えたサイバー犯罪のエコシステムとつながっています。世界でいま何が起きているのか、攻撃者はどう組織され、盗まれたデータはどこへ流れるのか。公的機関・調査機関の最新レポートから整理しました。

ONION ROUTING

ダークウェブを支える「玉ねぎ」の仕組み

Tor は通信を3重に暗号化し、世界中のボランティアが運営する3つの中継点を経由させます。各中継点は暗号を1層ずつ外すだけなので、どの中継点も「誰が」と「どこへ」を同時には知りません。これが「オニオン(玉ねぎ)ルーティング」と呼ばれる理由です。

「.onion」で終わるサイトへの接続では出口を使わず、Tor のネットワーク内部で接続します。[12]

01数字で見る世界のサイバー脅威

  • 499万ドル

    データ侵害1件あたりの世界平均コスト(過去最高)[2]

  • 31%

    侵害の初期侵入経路で最多となった「脆弱性の悪用」[1]

  • 48%

    ランサムウェアが関与した侵害の割合[1]

  • 48%

    取引先など第三者が関与した侵害の割合[1]

  • 209億ドル

    米FBIに報告されたネット犯罪の被害額(2025年)[6]

  • 100万件超

    同・苦情件数(1,008,597件、過去最多)[6]

ランサムウェアへの身代金支払額(世界・暗号資産)[3][4][5]
5.7億ドル2022
12.5億ドル2023
8.9億ドル2024
8.2億ドル+2025

Chainalysis の推計。2025年は「8.2億ドル超」で、追加の特定により9億ドル前後まで上方修正される見込みとされています。支払いに応じた被害組織の割合は過去最低水準の28%でした。

日本のランサムウェア被害報告件数(半期ごと)[9]
11422年 上期
11622年 下期
10323年 上期
9423年 下期
11424年 上期
10824年 下期
11625年 上期
11025年 下期
12326年 上期

警察庁への報告件数。2026年上半期は123件で、2022年以降の半期で最多となりました。

米国で被害額が大きかったネット犯罪(2025年)[6]
  • 投資詐欺86億ドル
  • ビジネスメール詐欺(BEC)30億ドル
  • サポート詐欺21億ドル
  • 個人データ侵害13億ドル
  • ロマンス詐欺9億ドル

FBI インターネット犯罪苦情センター(IC3)の年次報告。投資詐欺とビジネスメール詐欺が上位を占めます。

02ハッカー(攻撃者)の種類

「ハッカー」はもともと技術に詳しい人を指す言葉で、防御側の専門家も含みます。ここでは攻撃を仕掛ける側(脅威アクター)を、目的ごとに4つに分けて紹介します。

  • 最多

    サイバー犯罪集団

    目的: 金銭

    ランサムウェアや詐欺で利益を得る組織。開発者・侵入担当・資金洗浄など分業化が進み、攻撃ツールを貸し出す「RaaS(サービスとしてのランサムウェア)」が一般化しています。

  • 高度

    国家が支援する集団(APT)

    目的: 諜報・妨害

    政府機関や重要インフラ、先端技術の情報を長期間ひそかに狙う集団。標的型メールや未知の脆弱性を使い、発覚まで長く潜伏するのが特徴です。

  • DDoS中心

    ハクティビスト

    目的: 政治・主張

    政治的・社会的な主張のために攻撃する活動家。Webサイトを大量の通信で止めるDDoS攻撃が中心で、国際情勢に連動して活発化します。

  • 身近

    内部不正

    目的: 私怨・金銭

    従業員や委託先など、正規の権限を持つ人による持ち出し。IPA「10大脅威 2026」(組織編)でも7位に挙がっています。

欧州ネットワーク・情報セキュリティ機関(ENISA)の2026年版レポートでは、記録された事象の36%がサイバー犯罪、ハクティビストの犯行声明4,709件の89%超がDDoSでした。[7]

03ランサムウェア集団の動向

GuidePoint Security の集計では、2026年第3四半期にリークサイトへ掲載された被害組織は2,760件(前期比+21%、前年同期比+75%)、活動したグループは112に上りました。被害組織の42%が米国、業種では製造業が最多です。[8]リークサイトに載るのは身代金を払わなかった組織のみで、実際の被害はさらに多いと考えられます。[11]

  • #1TheGentlemen被害組織の12.9%
  • #2Qilin被害組織の12.6%
  • GuidePoint GRIT Q3 2026

04ダークウェブ事情

インターネットは「氷山」にたとえられます。検索エンジンで見つかるのは一角にすぎず、その下にログインが必要な領域、さらに奥に特別なソフトでしか入れない「ダークウェブ」があります。[12]

123
  1. 1表層ウェブ

    検索エンジンで見つかる一般的なWebサイト。ニュースサイトや企業サイトなど。

  2. 2ディープウェブ

    検索エンジンに載らない領域。ネットバンキングやメール、会員ページなど、日常的に使う大部分がここに含まれ、違法なものではありません。

  3. 3ダークウェブ

    Tor などの匿名化ソフトでしか接続できない、意図的に隠された領域。マルウェアや盗まれた認証情報の売買に使われるフォーラム・市場があります。

盗まれたデータはこう流れる

  1. STEP 1

    侵入

    脆弱性の悪用、フィッシング、インフォスティーラー(情報窃取型マルウェア)で認証情報や端末を乗っ取る。

  2. STEP 2

    アクセスの販売

    「初期アクセスブローカー」が、侵入した企業ネットワークへの入り口を闇市場で売る。

  3. STEP 3

    攻撃の実行

    RaaS に参加する実行役(アフィリエイト)が、買ったアクセスで侵入し、データを盗んでから暗号化する。

  4. STEP 4

    公開・転売

    支払わない組織の名前とデータをリークサイトに掲載。盗まれた個人情報は別の詐欺やなりすましに再利用される。

Chainalysis によると、初期アクセスブローカーへの支払いは2025年に少なくとも1,400万ドル。アクセスの平均価格は2023年第1四半期の約1,427ドルから2026年第1四半期には439ドルまで下がり(Darkweb IQ 調べ)、「侵入口」が安く手に入るようになっています。[3]

05各国当局の摘発

サイバー犯罪の基盤に対し、各国の警察・司法機関と民間企業が連携した国際的な摘発が続いています。

  1. 2024-02-20

    Operation Cronos[13]

    英国家犯罪対策庁(NCA)とFBIなど10か国が、世界最大級のランサムウェア集団 LockBit の基盤を制圧。復号鍵1,000件超を入手。

  2. 2024-05

    Operation Endgame[15]

    ボットネットに対する過去最大の作戦。マルウェアを送り込む「ドロッパー」5種の基盤100台超を停止し、4人を逮捕。

  3. 2024-10-01

    LockBit 追加摘発[14]

    Operation Cronos の第3段階として新たに4人を逮捕し、関係者に金融制裁。

  4. 2025-05-21

    Lumma Stealer[16]

    Microsoft、米司法省、Europol、日本のJC3が連携し、インフォスティーラー Lumma の約2,300ドメインを停止。2か月で39万台超の感染端末を確認。

  5. 2025-06

    Archetyp Market[17]

    60万人超の利用者を抱えていた、最も長く続いたダークウェブの違法薬物市場を欧州5か国で閉鎖。

  6. 2025-11

    Operation Endgame(第3弾)[18]

    インフォスティーラー Rhadamanthys や遠隔操作ツール VenomRAT などの基盤1,025台を停止。

  7. 2026-03-04

    Tycoon 2FA[19]

    多要素認証を突破するフィッシング代行サービスを、Microsoft と Europol などが無力化。330ドメインを押収。

  8. 2026-04

    Operation PowerOFF[20]

    DDoS 攻撃の代行サービスをめぐり21か国が連携。7.5万人超の利用者を特定し、53ドメインを停止。

06日本の状況

123

2026年上半期のランサムウェア被害報告(件)

警察庁によると、2026年上半期のランサムウェア被害の報告は123件。データを暗号化せずに盗んで脅す「ノーウェアランサム」も9件ありました。2025年通年は226件で、業種別では製造業(91件)が最多です。[9]

IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編[10]

  1. 1ランサム攻撃による被害
  2. 2サプライチェーンや委託先を狙った攻撃
  3. 3AIの利用をめぐるサイバーリスク初選出
  4. 4システムの脆弱性を悪用した攻撃
  5. 5機密情報を狙った標的型攻撃
  6. 6地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む)
  7. 7内部不正による情報漏えい等
  8. 8リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃
  9. 9DDoS攻撃
  10. 10ビジネスメール詐欺

個人編は順位をつけず、フィッシングやサポート詐欺などの10項目を五十音順で掲載しています。

世界の動向から、個人ができること

  • パスワードの使い回しをやめ、パスキーや多要素認証を有効にする(盗まれた認証情報の再利用を防ぐ)
  • OS・ブラウザ・ルーターを自動更新にする(最多の侵入経路「脆弱性の悪用」を防ぐ)
  • ブラウザへのパスワード保存は信頼できる端末だけにし、不審なソフトを入れない(インフォスティーラー対策)
  • 「漏えいのお知らせ」を装う連絡では、メールのリンクを使わず公式サイトで確認する

レベル別の対策ガイドを見る →国内の漏えい事案を調べる →

出典

  1. [1]Verizon 2026 Data Breach Investigations Report(Executive Summary)
  2. [2]IBM Cost of a Data Breach Report 2026(IBM Newsroom 2026-07-29)
  3. [3]Chainalysis 2026 Crypto Crime Report — Ransomware
  4. [4]Chainalysis 2025 Crypto Crime Report — Ransomware
  5. [5]Chainalysis 2024 Crypto Crime Report — Ransomware
  6. [6]FBI IC3 Internet Crime Report 2025
  7. [7]ENISA Threat Landscape 2026
  8. [8]GuidePoint Security GRIT Q3 2026 Ransomware & Cyber Threat Report
  9. [9]警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
  10. [10]IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」
  11. [11]CISA Advisory AA23-165A(LockBit / RaaS)
  12. [12]Cisco Talos「What is the dark web?」
  13. [13]UK NCA — Operation Cronos(LockBit)
  14. [14]Europol — LockBit power cut(2024-10)
  15. [15]Europol — Operation Endgame(2024-05)
  16. [16]Microsoft — Lumma Stealer disruption(2025-05-21)
  17. [17]Europol — Archetyp Market takedown(2025-06)
  18. [18]Europol — Operation Endgame(2025-11)
  19. [19]Microsoft — Tycoon 2FA disruption(2026-03-04)
  20. [20]Europol — Operation PowerOFF(2026-04)

数値の確認日: 2026年10月20日。各レポートは調査対象・期間・集計方法が異なるため、数値どうしを単純に比べることはできません。最新の内容は各出典をご確認ください。

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