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ATTACK METHOD

標的型攻撃メール・フィッシング ― 多要素認証をも抜ける手口へ

偽ログイン画面・AiTM(中間者攻撃)・BEC・クイッシングなど、メールと SMS で認証情報とセッションを奪う攻撃の仕組み、日本の報告73万件の実態と対策。

当サイト収集事案: 12事案影響規模の合計: 約15万人分全手法の一覧: 攻撃手法の分類と動向

フィッシングは最も長く続く侵入手法です。DBIR 2026でも侵入経路の16%を占めて横ばいで、加えて「プリテキスティング」(架空の前提を作り込む詐欺話法)が6%に拡大し、ランサムウェア・恐喝への入り口になっています。日本では2026年上半期のフィッシング報告が約73万件に上り、報道ベースではその約45%の配送サーバーが中国域に置かれていました。

手口は「偽画面でパスワードを入力させる」単純なものから、多要素認証(MFA)をも突破する中間者攻撃型(AiTM)へ進化しています。AiTM では攻撃者のサーバーが本物のログイン画面の「代理」になり、ユーザーが MFA を完了してもそのセッション(Cookie)ごと奪われてしまいます。

日本の事案データでは、フィッシングを起点とする漏洩は件数自体は多くありませんが、1件が財務・決済権限に直結するビジネスメール詐欺(BEC)や、その後の不正アクセスに発展するケースで深刻度が高くなります。

数字で見る動向

16%

世界の侵入経路に占めるフィッシング(DBIR 2026・横ばい)

約73万件

日本の2026年上半期フィッシング報告(警察庁)

6%

プリテキスティング(詐欺的前提)の占有率、拡大中(DBIR 2026)

具体的な技法の解説

偽ログイン画面(認証情報ハーベスト)

本物そっくりのログインページへ誘導し、入力された ID・パスワードを収集する古典的手口です。取得した認証情報はそのままログイン試行(リスト型攻撃)や地下市場での転売に使われます。ドメインは本物と1文字違い(punycode 等の国際化ドメイン悪用を含む)が多用されます。

中間者攻撃型フィッシング(AiTM)

攻撃者が用意したページがリアルタイムに本物サイトへ中継する構成で、ユーザーは本物と同じ MFA 認証を完了してしまいます。攻撃者は認証後に発行されるセッション Cookie を奪い、以後は本人になりすまします。「MFA を導入したから安全」が崩れる代表的手口です。

ビジネスメール詐欺(BEC)

経営層・取引先を装い「至急振込め」と指示を出す詐欺です。システム侵入を伴わない(または盗んだメールアカウントを使う)ため技術的検知が難しく、被害は送金額がそのまま損失になります。振込先変更の承認ルールを複数人に分けることが最も効きます。

QRコードフィッシング(クイッシング)

メール内の QR コードをスマートフォンで読み取らせ、個人端末で偽ページを開かせる手口です。業務 PC の URL フィルタリングを回避でき、個人スマホでの入力になるため警戒も薄れます。

セッションCookieの窃取

認証後のセッションを維持する Cookie を奪えば、パスワードも MFA も使いません。AiTM の実行手段であると同時に、情報窃取型マルウェアが保存済み Cookie・トークンをかすめ取る形でも発生します。多要素認証の耐性を高めるには、ハードウェアトークン(FIDO2)とセットで考える必要があります。

攻撃の流れ(キルチェーン)

  1. 業務文書を装ったメールやSMSを送り付け開かせる
  2. 偽のログイン画面や申請フォームで認証情報を入力させる
  3. 奪った認証情報で本物のシステムに侵入

狙われる情報: ログインID・パスワード、送金・契約の承認権限

動向と論点

日本の報告約73万件のうち約45%の配送サーバーが中国域という警察庁の分析が示す通り、配送基盤は国外に分散しています。また、AI の文章生成によって、かつて「日本語が不自然で見抜けた」詐欺メールが自然な文面になり、判別は難しくなる一方です。

技術対策の最有力は「フィッシングに耐性のある認証」への移行です。FIDO2 / パスキーは偽サイトに対して認証情報を送らない設計のため、AiTM 型を含む多くのフィッシングを原理的に無力化します。あわせて送金・契約変更の業務ルール(多承認・電話確認)を整えることが、BEC 対策の要になります。

対策

個人・中小事業者向け

  • メールや SMS のリンクからログインせず、必ず自分で公式サイトを開いてログインする
  • 大事な手続きは URL ではなくブックマーク経由で行う習慣をつける
  • 振込依頼は必ず既知の電話番号に折り返し確認する(メールの文面だけでは判断しない)

組織(情報システム部門)向け

  • FIDO2・パスキーなどフィッシング耐性のある認証を優先導入し、SMS ワンタイムパスワードから移行する
  • 送金先変更・契約変更には複数人承認と口頭確認を必須化する(BEC 対策)
  • メールゲートウェイでの URL 書き換え・添付サンドボックス化と、疑わしいメールの報告文化を作る
  • 標的型攻撃メール訓練を定期的に実施し、開封率ではなく報告率を指標にする

保護レベル別の具体的な手順は対策ガイドで解説しています →

当サイト収集の標的型攻撃メール・フィッシング事案(12件・影響規模順)

企業・組織公表日対象規模重大度
カインドオル(ECサイト)2026年9月1日136,464人S
Axcelead Drug Discovery Partners株式会社2026年7月21日7,000件S
株式会社講談社2026年8月2日3,812件B
株式会社マリモホールディングス2026年3月5日1,360人B
株式会社じほう2026年2月25日890件B
株式会社八十二長野銀行2026年10月18日672件B
東京都立大学(教員のGoogleアカウント)2026年1月7日423件S
株式会社JEMS2026年3月25日223件S
日経BP2026年10月3日26件B
日本エネルギー経済研究所2026年10月1日13件S
山口大学(教職員メール)2026年10月5日1アカウントS
東京計器株式会社2026年4月26日不明S

関連する攻撃手法

出典・統計の詳細は 攻撃手法の分類と動向 の出典一覧をご参照ください(Verizon DBIR 2026、CrowdStrike GTR 2026、警察庁・共同通信、 Palo Alto Networks Unit 42 ほか)。事案個別の情報は各事案ページの出典リンクから公式発表をご確認ください。

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