本文へスキップ

ATTACK METHOD

脆弱性の悪用 ― 侵入経路の首位に躍り出た手口

ウェブシェル設置・ゼロデイ・エッジ機器(VPN)の脆弱性など、ソフトウェアの穴を突く攻撃の仕組みと対策を解説。日本の事案データと海外レポートの最新動向。

当サイト収集事案: 39事案影響規模の合計: 約8,424万人分全手法の一覧: 攻撃手法の分類と動向

「脆弱性の悪用」は2026年、世界の侵入経路の首位に立ちました。Verizon DBIR 2026では全侵害の31%が脆弱性悪用による侵入で、盗まれた認証情報(前年の首位)を抜いて1位です。なかば衝撃的なのは VPN・ファイアウォールなど境界に立つ機器の悪用が約3%から22%へ一気に拡大した点で、修正プログラムが出る前後の数日〜数週間が勝負になっています。

日本でも同じ構図が観測されています。トレンドマイクロの調査チームは、公開されている Web アプリケーションの既知の脆弱性を突いてウェブシェルを設置し、権限昇格・横展開でデータベースに到達する一連の手口が国内で増加していると報告。2026年秋に国内約80社を標的とした攻撃で使われたとされる中国系 AI「ARTEX」も、業種を絞った自動スキャンと組み合わせた脆弱性突きが主戦術でした。

ここでの要点は「新しい攻撃」ではなく「直せると分かっている穴を突かれる」ことです。対応済みの脆弱性が悪用される事案が大半を占めるため、パッチ適用の速度とインターネット公開資産の棚卸しが、他のどの対策より効きます。

数字で見る動向

31%

世界の侵害で脆弱性悪用が侵入経路1位(DBIR 2026)

3%→22%

VPN・エッジ機器悪用の急増(DBIR 2026)

+42%

公開前悪用のゼロデイ増(CrowdStrike GTR 2026)

具体的な技法の解説

ウェブシェルの設置

侵入に成功した攻撃者がサーバー上で動く小さなスクリプトを設置し、Web 経由で任意のコマンドを実行できるようにします。一見正常なファイルに紛れ込むため発見が難しく、初回侵入から窃取までの「足場」として長期間使われます。国内事案でも侵入後にウェブシェルが見つかるケースが相次ぎました。

ゼロデイ脆弱性の悪用

修正プログラムがまだ公開されていない穴(ゼロデイ)を使う攻撃です。CrowdStrike GTR 2026では、公開前に悪用されたゼロデイが前年比42%増と報告されています。ただし実際の被害の多くは「修正は出ているのに適用していない」既知の脆弱性によるもので、ゼロデイは氷山の一角です。

エッジ機器(VPN・アプライアンス)の脆弱性

インターネットに直接露出する VPN 装置・ファイアウォール・ロードバランサー等の穴を突く手口です。境界防御の要である機器自体が侵されるため、内網への侵入が一気に起こります。DBIR 2026で VPN 経由の侵入が約3%→22%に急増したのがこの手口で、メーカー修正の適用が数日遅れるだけで被害が広がります。

SQLインジェクション

Web フォーム等に入力した文字列をデータベース命令として実行させてしまう、古典ながら今も根絶しない手口です。対策(プレースホルダの利用)は確立しているにもかかわらず、古いシステムや内製ツールで今も発生しています。

権限昇格と横展開

侵入の第一歩では得られない管理者権限を、設定ミスや未修正のローカル脆弱性を利用して奪い、サーバー間・部門間へ範囲を広げます。ランサムウェアや大規模窃取の前段としてほぼ必ず発生するフェーズで、内部ネットワークの分段(セグメンテーション)が効く場面です。

AIによる自動スキャン+手動攻略

Unit 42 が報告した中国語話者の攻撃者は、AI(Hermes Agent 経由の DeepSeek)に7種類の脆弱性を自動スキャンさせ、有望な標的だけ人が攻略する「自動化と手動のハイブリッド」運用をしていました。攻撃側のコストが下がり、中堅企業でも標的になる時代に入っています。

攻撃の流れ(キルチェーン)

  1. インターネット公開サービスをスキャンして脆弱性を探索
  2. 既知・ゼロデイ脆弱性を悪用して侵入しウェブシェル等を設置
  3. 権限昇格・横展開してデータベースへ到達し情報を窃取

狙われる情報: 公開アプリの背後にある顧客データベース

動向と論点

国内トレンドマイクロの調査では、日本でも「既知脆弱性→ウェブシェル→権限昇格→データベース到達」という一連の流れを持つ侵害が増加しています。つまり日本の2026年秋の漏洩ラッシュは、特殊な手法ではなく世界標準の手口が大量に実行された結果です。

対策の優先順位は明確で、①インターネット公開資産の棚卸し、②エッジ機器・公開アプリの最優先パッチ適用、③侵害前提の内部構造(権限分離・分段)です。「全ての脆弱性をすぐ直す」ことは現実的でないため、露出資産から順に潰す運用が重要です。

対策

個人・中小事業者向け

  • 個人では直接の対策対象は少ないものの、利用サービスからの「不正アクセス通知」を受け取ったら パスワード変更(使い回し解除)をただちに行う
  • ルーターや NAS など自宅のインターネット機器のファームウェア更新を定期的に確認する

組織(情報システム部門)向け

  • インターネット公開資産(ドメイン・IP・サービス)の網羅的な棚卸しを四半期に1回実施
  • エッジ機器と公開アプリの脆弱性対応は SLO を決め(例: 修正公開から7日以内)、未対応を可視化
  • WAF・IPS の導入に加え、ウェブシェル検知(不審な POST・ファイル配置の監視)をログ監視に組み込む
  • 内部は分段し、侵入されても横展開で全社に波及しない構造にする(権限の最小化を含む)

保護レベル別の具体的な手順は対策ガイドで解説しています →

当サイト収集の脆弱性の悪用事案(39件・影響規模順)

企業・組織公表日対象規模重大度
Helpfeel(Gyazo)2026年9月15日23,620,000件SS
Eストアー(ショップサーブ)2026年10月15日23,356,000人SS
アドベンチャー(スカイチケット)2026年10月9日14,640,000件SSS
KDDI(ISP事業者向けメール基盤)2026年6月22日12,231,954人SSS
ムラウチドットコム2026年9月14日7,710,000件S
ホワイトエッセンス(予約・基幹システム)2026年10月4日1,050,000アカウントS
LEAN BODY2026年9月14日440,000アカウントA
ユーザベース(NewsPicks)2026年10月7日362,000件A
加賀ソルネット(アカデミコナビ)2026年8月16日166,000人A
タカラトミー(デュエマサポートアプリ)2026年7月27日155,000人A
日本医科大学武蔵小杉病院2026年2月26日130,000人A
Fivot(IDARE)2026年10月12日129,659人A

他 27 件を含む全事案は漏洩ウォッチで →

関連する攻撃手法

出典・統計の詳細は 攻撃手法の分類と動向 の出典一覧をご参照ください(Verizon DBIR 2026、CrowdStrike GTR 2026、警察庁・共同通信、 Palo Alto Networks Unit 42 ほか)。事案個別の情報は各事案ページの出典リンクから公式発表をご確認ください。

← 攻撃手法の分類と動向に戻る

LIVE